

業務プロセスを革新すれば「いいこと」があるはずなのに、なかなか進まないという状況が長らく続いていました。建前はともかく「ビジネスプロセスや業務フローを革新して本当に何かいいことがあるのか?」というのが経営トップの本音でもあるからです。勝田さんのご指摘の通り、内部統制とは業務改善であり、大きな業務改善の中には不正の撲滅も含まれます。それではこの辺の米国の事情について、コンサルタントの貞金さんにお話しを伺いたいと思います。
まず、いき過ぎた統制について、アメリカで実際に起きた例をお話しします。米国では罰則規定に20年間の禁固刑があるため、CEO、CFOになる人がいなくなったという現象が起きています(図3参照)。現在、CEOが2年、CFOが1年半、CIOは1年と、平均在任期間が非常に短くなっている。SOX法が始まったせいで、業績がよいからといって必ずしも優良企業とは限らなくなっている。CEOにも会社にもリスクがある。

図3 米国のいき過ぎた内部統制でCEOのなり手が少なくなった
もう一つは、インターナショナル企業に目立っている例ですが、本国外の責任も本社のCEOがとらされます。文化の違いや文書規定の違いなどは言い訳になりません。こういった目が届かない領域をどう統制するのか。連結グループ子会社の報告をいかに信用、もしくは監査するのか。これもCEOの責任になります。特にアメリカの企業ではM&Aが盛んですから、それぞれの企業DNAが絡み合ってきていて、いかに統制すればいいのかわからない。それが原因となって、もうCEOになりたくないという現象が起きているわけです。
2002年3月、SOX法ができる前に、米国証券取引委員会(SEC)がアメリカでかかるコストを1社あたり約1,000万円と算定しましたが、上場企業における2005年3月の統計では、実際は平均3億8,000万円でした。これはあくまで平均ですから、40億円かかったところもあるし、1,000万円のところもある。ただし、監査法人にかなり振り回されているところがあって、すべてのことをやらなければいけないという思い違いが当初企業の中に発生したようです。どういうことかといいますと、ビジネスプロセス関係の分析、リスクコントロールマトリックス、そういったものを対象を絞り込まずにやっている企業もかなりあった。
それにちなみ、SOX法に対してSEC委員長が「単純に規定に従うだけでは十分ではない。企業のDNAを深く浸透させるべきである」と言っています。もし企業が新規法案をチャンスと捉えるのなら、内部統制のあり方を改善して経営陣の能力を高めることができるはずです。そのことによって企業は絶対的によりよい方向に走り始め、可視化という意味で透過性が得られる結果、投資家にとっても利益が出るということなのです。アメリカでは民間人の3割が投資を行っていますから、投資は非常に大きな問題です。
さらに、バーゼルII規制(新BIS規制)があります。これは金融機関に対する統制で、内部統制とは別の基準ですが、オペレーショナルリスクという考えがポイントです。リスクに対する準備資金を用意しなさいということが謳われています。一つのプロセスが失敗したときに、いくら損失が発生するのかということを答えられる人がどのくらい会社の中にいるかが一つの課題になってきているのです。実際、オペレーショナルリスクに割り当てられた金額は2~7億ドルで、金融機関ごとに準備資金として用意されています。プロセスが失敗に終わったときに準備される蓄えが会社の中にどのくらい存在しているかが、この中で重要になっているわけです。

企業のセキュリティのヒントが分かる