
- 有能な社員に業務が集中することはよくある話です。一人で二役も三役もこなす仕事ができる社員は、業務効率の面からはありがたいものです。しかし、職務分掌を曖昧にしたまま業務を集中させることは、内部統制の観点からリスクとして認識される可能性があります。
例えば、ひとりの社員がサプライヤーと話をつけて売買契約を締結、必要な資材をすぐさま発注し、決裁や納品管理までやってしまうとします。これは、購買業務において実施と決裁の分掌がなされていないとみなされ、監査において内部統制が不十分と判断される恐れがあります。こういった、職務分掌が規定されていないビジネスプロセスは、文書化を推進する過程でよく見つかります。
また業務システムにおいては、せっかく実行者と承認者の権限を分けて設定しているのに、実務上は実行者が承認者のIDを使って承認をおこなったり、業務と関係のないシステム管理者が管理者権限でデータを操作できてしまう仕様になっていたりするケースがあります。これは職務分掌が規定されているにもかかわらず効果が認められない例で、やはり内部統制が不十分と評価されることになるでしょう。 
- 今まで一人でこなしていた業務を分けなさいと言われて戸惑うお客様は多いようです。「分けてしまうと業務効率が損なわれる、意味が無い」ともよく言われます。
しかし、財務諸表の信頼性を確保するためには職務分掌の問題は避けて通れません。この問題を放置しておくと、将来会社の信用を失墜させることになりかねず、悪くすれば取引先を失う危険すらあります。
職務権限の規程をしっかり作り、それが確実に守られる仕組みが求められます。その点進んでいるのは欧米の企業です。職務規程で職務ごとの権限がきっちり決まっているのに加え、他人の職務権限を侵さないというルールを守る風土が存在しています。
日本の企業には、理念や目標といった大きなテーマはあるのですが、それを職務分掌の規程にまで落としこめているところは多くはないようです。上場の際に職務規程・業務記述書などをそろえているはずの企業においてすら、上場以来全く更新されていないケースも見られます。
また、海外に連結対象となる子会社がある場合にも注意が必要です。日本国内と異なる商慣習のもとで、日本同様の職務規程を徹底するためには、事前の業務可視化が必須と言えるでしょう。














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