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引き続き、新しい「IT’s VALWAY」 http://itsvalway.necsoft.com/をよろしくお願いいたします。

特集

対談医療新時代の到来。患者が主役のIT 医療環境を創る

かとう内科クリニック加藤清院長 医療ソリューション事業部事業部長 飛鳥井 雅巳

患者満足度の向上に不可欠な医療情報システム

加藤:

現在の医療界には、受益者負担が適正かどうか、患者への医療サービスの質をどうやって高めていくか、医療技術を誰の観点から評価していくかなど、まだまださまざまな課題がありますが、ここへきてようやく病気を治すだけの医療から、どうしたら患者に選んでもらえるかといった視点を加えた「医療サービスの提供」という方向にシフトしてくるようになりました。

飛鳥井:

医療現場における患者満足度の追求ですね。

加藤:

ええ。病気を治すのはもちろん、一人ひとりの患者に気持ち良くなってもらう、快適な医療サービスを提供するためには、どうしたらいいのか。例えば、私のクリニックではリウマチで悩む患者さんもよく来院します。そういう人たちのために、バー・スツールのような足の長い椅子とカウンターを用意したのですが、これもひとつの快適さをお届けする手段ですよね。こういったことを考え、実践していくことが課題だと思っています。

飛鳥井:

その視点に学ぶことは、私たちにも大いにあります。「患者満足度の向上にITがどう貢献できるか」は、すべての医療の現場に不可欠ですから。

加藤:

そうですね。実は私も開院する前の20年近くの間、病院の情報システム構築に携わってきました。COBOLによるオーダリングシステムの立ち上げや、それらのPCへの移植、2000年問題への対応なども経験しています。しかし、その頃は、患者の視点でのシステムづくりというよりは、医療サービス提供側の効率化を図ることが主眼。蓄えたデータを患者のためにどう有効活用するか、という考え方は、最近になってようやく一般化してきたと言えるでしょう。

飛鳥井:

患者の視点が重視されたのは、カルテの電子化が進みはじめた頃からですね。

加藤:

電子カルテのシステムは、当然、業務効率化を推進するものですが、なんといっても一番は患者のためになるもの。医師や医療機関の間で最適な治療を提供するために患者の情報を共有したり、診断画像データと連携して患者さんにEBM(根拠に基づく医療)を進めたりするツールとして不可欠なものです。

高品質な医療サービス提供に向け情報システムをいかに活用するか

飛鳥井:

とはいえ、システムを導入しようとする多くの医療機関は、やはり投資対効果を気にされます。高額なコストを負担するのだから、それ相応の成果が保証されないと導入できない、と。そのロジックは当然ですが、特に医療の世界ではビジネスベースだけで語れませんよね。その辺りの理解を求めていくのが、非常に悩ましい部分です。

加藤:

ただ、数字では表れにくい部分を、いかにとらえるかによっても変わってはきませんか?例えば、レントゲンやCTスキャンなどで撮った画像を一緒に画面で見ながら説明を受けると同時にカルテも作成していく。そんな診察なら、患者の安心や満足の度合いも高められますよね。

飛鳥井:

確かに。実は私もこの間、病院で診察を受けたのですが、口頭だけでなく画像データを見ながら説明を受け、非常に納得できました。

加藤:

さらに、診断画像データはあくまで患者自身のものという観点から、データをプリントアウトして患者に渡す。これも、ひとつの情報開示です。診察料金に見合ったサービスの一環ですね。それだけでも、「あそこの病院は親切丁寧」なんて評価につながるわけですよ。そういう数字には表れにくい領域でのサービスの質の向上も、大事です。いくらコストを圧縮できたかとか、何%の効率化が果たせたとかだけじゃなく、もはや新たなサービスの提供や医療の質の向上には、 ITが関与しないとどうしようもないんです。

飛鳥井:

そういったことをいかにご理解いただくかに私たちも腐心しているわけです。

加藤:

一方で、電子カルテもさまざまなベンダーからリリースされていますが、マスターデータをいかに使いやすいように設定できるかといった視点が欠けているものが多かったり、個人情報保護法の施行もあって電子化することでセキュリティへの新たな取り組みも必要になったりと、技術的な部分でもクリアしなければならない課題がまだまだたくさんありますからね。情報システムをいかに活用していくかは、永遠の課題かもしれませんが、医療サービスの提供側とそれを受ける患者側、両方の視点から追求していくしかないでしょう。

医療・IT共通の課題である人材育成をどうするか?

飛鳥井:

医療の現場でいかに使えるシステムやソフトウェアを提供していくかは、私たちに課せられた大きな使命なのですが、医療業務に明るいSEを育てていくことも重要です。

加藤:

人材育成は大切ですね。情報活用環境の整備という論点から少し脱線してしまいますが、特に医療の世界では根底に潜む問題と言えるかもしれません。私自身、教育現場にいた経験もあるのですが、現状では、人の命や健康を預かるという立場に就くにもかかわらず、病気を診るのと患者を見る、その違いに気付いていない医師が多いというのが私の実感。病気の治療だけでなく、患者のメンタルケアまでできる医師でないと、本当の意味で患者を治すことはできないと思うんです。

飛鳥井:

患者をお客様、医師をSEに置き換えると、私たちの業界も同様かもしれません。

加藤:

例えば、大きな病院などでは電子カルテのテンプレート化を進めていたりしますが、それは業務効率化や情報共有化というよりも、スキルの足りないスタッフが最低限の記録を残せるような書式に統一するという側面が目立つような気がします。

飛鳥井:

本当の意味での医療サービスを展開していくためには、「患者の視点」が欠かせません。SEは医療の専門家ではありませんが、医療をサポートするプロフェッショナルとして専門知識を深めると共に、医療を客観しながら患者サイドに立って医師の皆様により実戦的なソリューションを提供していく必要があります。

医療界のIT化に伴う情報活用の今後のキーワードは“連携”

飛鳥井:

医療界におけるIT化の促進には、まだまだ越えなければならないハードルがたくさんありますね。

加藤:

診断画像データとの連携、予防医療や保健、福祉などを含めた介護系との連携、遠隔医療も含めた主治医と専門医の連携など、“連携”をキーワードにさまざまな領域でITの有効活用が課題じゃないでしょうか。

飛鳥井:

病病・病診連携のソリューションは、すでに私たちもプロダクト化しています。また、NECグループとしては、“MegaOak”シリーズにラインナップされたさまざまなパッケージを連携させ、診療・看護業務支援、医療事務、管理・経営、部門支援などの医療情報ソリューションをトータルに展開しています。

加藤:

病病・病診連携は、現場レベルでクリアしなければならないことも、まだまだたくさんあるんですよ。例えば、セカンドオピニオンなどとも絡んできますが、患者を他の医師に紹介するときの方法をどうするか。電子カルテを進めている医療機関が、まだそうでない医療機関の医師に対して患者情報を送るとき、膨大なデータを紙ドキュメントに移し替える手間が発生したりしますからね。

飛鳥井:

デジタルデータのやりとりでも、マスターのフォーマットの違いをはじめ、インターネット経由、その他のメディア経由、どちらの場合でもセキュリティが非常に大切になってきます。

加藤:

全体のインフラとして整備されなければ難しい領域ですね。

飛鳥井:

私たちでは情報基盤の領域として、情報漏えいやウィルス対策などによるセキュリティや運用管理などのソリューションを提供しています。しかしセキュリティの課題をクリアしつつある現状でも、「予算がないから電子カルテはいらない」というお客様は多いですね。

加藤:

「オーダリングまでで充分」というのはナンセンスでしょう。発展途上とはいえ、情報の電子化、システム化によって得られるメリットはたくさんあります。電子化するとカルテ庫がなくなるんです。維持コストは言うに及ばず、検索性は飛躍的に高まりますよ。その辺りを理解し切れていない医療従事者は、今でも結構多いんじゃないですか。

飛鳥井:

まだまだ電子カルテの普及率は全国で数%ですから、地域密着型の病院様や診療所様に向けての啓蒙活動から誠実に取り組んでいきます。

加藤:

認知・浸透の向上という部分も含めて、NECソフトをはじめとするメーカーやベンダーのみなさんには、もっともっと努力してほしいですね。やはり、患者の満足度向上につながるシステムやソリューションという視点に軸足を置いて。

飛鳥井:

プロダクトの開発にも注力していますが、患者への貢献、そして医療現場の理解という側面から、SEに医療情報技師の資格取得を推奨するなどの取り組みを始めています。今後も人材育成まで含めて、私たちの得意分野であるITを生かし、いかに医療の世界に貢献できるかを追求し続けていきたいと思います。

プロフィール

加藤 清
Kiyoshi Kato

1971年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、1977年横浜市立大学医学部を卒業し、同年、横浜市大医学部附属浦舟病院研修医として医籍登録。1979 年に同第一内科入局し、アレルギー免疫の臨床と研究に入る。1987年から2年間、ノースカロライナ大学分子生物学のリサーチフェロー、1989年横浜市立大学医学部講師、1991年横浜市立大学医学部附属病院医療情報部長兼任、2000年逗子病院院長、2001年桐蔭横浜大学工学部医用工学科教授兼、横浜総合病院内科部長、アレルギー学会評議員、呼吸器学会指導医、リウマチ学会情報化委員、日本医療情報学会評議員を経て、2004年にかとう内科クリニックを開院。現在に至る。

飛鳥井 雅巳
Masami Asukai

1976年東京教育大学卒業、NECソフトに入社。主に、製造業・プロセス業向けのシステム開発に従事。入社~1993年まで(17年間)は、NECで活動。その後、NECソフトに復帰。プロセス業を担当し、2003年より医療ソリューション事業部長として活動中。

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