
西村 淳一
第一製薬株式会社
生産物流業務部
物流グループ長
システム化された自動倉庫が稼動する物流センターの先進性
今や日本は医薬品の売上げでは世界第2位の市場。それを象徴するように国民医療費も2010年にはおよそ68兆円にも達するといわれています。身近な部分でも町中にはいたるところに安売りを謳うドラッグストアの存在が目を引き、新規店舗の出店、売上げともに急進を続けています。そうした日本の医薬品状況を支える製薬企業は現在約1,400社。比較的順調な社会背景はあるものの、海外の製薬企業を交えての業界再編も本格化する様相を見せ、ロジスティクスの部分も含めトータルな意味での企業力が問われる時代に突入しています。
- プロフィール
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第一製薬(株)東京物流センター
- 所在地/埼玉県吉川市旭5-11
- 新稼動/2000年従業員数/30名(パート・アルバイト含む)
- 業務内容/東北・関東・甲信越・北海道地域への商品の配送および保管と全国からの受注受付(一部参天製薬の商品の配送も行う)
全国5つの物流拠点から600ヶ所へ配送

元橋 孝之
第一物流株式会社
営業企画推進部主席
第一製薬の物流を預かる生産物流業務部物流グループの西村淳一グループ長は、製薬業界の物流の現状を次のように語ってくれました。
「製薬業界は物流コストが1%程度と非常に低い業界です。しかし、メガファーマーの攻勢など厳しいグローバル化の時代を迎え、各メーカーは製品開発のため研究開発への膨大な投資やグローバルな販売網構築に注力する状況になっています。そのため、物流コストをいかに低減するかなど、物流のあり方に真剣に取り組んでいます」
この言葉を裏づけるように、メーカー同士の共同配送、共同物流の話も出てくるようになっています。第一製薬でも1年半前から参天製薬の物流センターの整理に伴い、同社の商品の共同配送を行っています。
「参天製薬さんとは昔からの交流もあり、比較的スムーズに話が進んだのですが、製薬メーカー全体を考えた場合は各メーカーとも物流のためのスペースが確保できないなどの制約もあり、なかなか足並みを揃えるのは難しいのが現状です」(西村グループ長)
さらに外資系のメーカーでは一部、物流のアウトソーシングが実現しているものの、国内メーカーではこの部分でも問題は多いといいます。「商品の性質上、品質や安全性の点を考えると、外部企業に物流をまかせるにはもうしばらく時間がかかるのではないかと思います」(西村グループ長)
従来頻度が高く、また小口での納品が多かった製薬業界の物流ですが、最近では卸側が在庫コストなどを考え計画的な発注を行うため、メーカー側の入出庫の頻度は少なくなり、同時にケース単位での納品がほとんどになったといいます。
第一製薬では全国をブロック分けし、5つの物流拠点で計600ヶ所へ配送しています。そのうち東京物流センターが扱うのは、東北・関東・甲信越の180ヶ所です。
ある意味で、メーカー側の物流は仕事が楽になっているといえます。しかし、第一製薬は10年の期間をかけ、最新の設備、システムを有した物流拠点を作り上げました。そこにはいったいどういう意図があるのでしょうか。
どの業界に対しても誇れる15年先まで見据えた最新設備

ロボットデパレタイザー
フェースデパレタイザー
デジタルピッキングシステム
埼玉県吉川市の工業団地の一角に2000年春に完成した第一製薬の東京物流センターは、商品ケースの自動荷降ろし機であるロボットデパレタイザーとフェースデパレタイザー、人の作業を確実・迅速にするデジタルピッキングシステム、トラック積み込み状況に合わせて自動的に伸縮するコンベヤー、震度7 の地震にも対応できる免震立体自動倉庫など、製薬業界にとどまらず、物流センターとしてはどの業界のそれと比べても遜色のないものとなっています。
「最新のシステムを導入し、ほぼすべてを自動化した倉庫を作ろうとしたのは物流品質の確保、作業の効率化・省力化、さらには災害対策、経済性といろいろとありますが、何よりも年々多様化していく物流に対して15年先でもしっかり対応できる拠点を作りたかったのです」(西村グループ長)
現在、同センターでは午前10時と午後1時の2回で注文を締め、午前受注分は翌日、午後分は翌々日までに配送するシステムができあがっています。同センター完成後、それまで70%だった翌日配送分が90%以上にまでアップしているといいます。
また、同センターは全国からの受注を受ける窓口の役割も果たし、10名のオペレーターが業界のデータ標準であるJD(Japan Drug)ネットを通して送られてきた注文データをホストコンピューターで加工、5ヶ所の物流拠点に発注データを送付しています。
多様な機器を完璧にコントロールする管理システム
最新の機器をコントロールし、遅滞なく商品の出荷を行うためには完成された管理システムの存在が不可欠になります。同センターは鹿島建設株式会社がトータルエンジニアリングを行い、NECソフトはその下で物流管理システムの構築を担当してきました。特に配送の順番を考えて商品のトラック積み込み順をコントロールする配送逆順積み込みシステムは、他メーカーにはない独自のシステムとして高い評価を受けています。
「多様な機械の整合性を取るためには、何よりも信頼性の高いシステムの構築が前提になります。その意味で安心してお任せできるところにと考え、鹿島建設とNECソフトにやっていただくことにしました」と語るのは第一物流株式会社営業企画推進部の元橋孝之主席。
稼動から3年、大きなトラブルもなく現在に至っていますが、もっともトラブルが発生しやすい7、8年先を見据え、トラブルが発生した場合に適切にバックアップできる体制がNECソフトには求められています。
また今回のシステムは、従来の汎用機をベースにしたシステムではなく、クライアントサーバー型のシステムとして構築されています。
「分散型のシステムにした結果、非常に小回りの効くシステムができ、その結果きめ細かい物流体制を取れるようになりました」(西村グループ長)
「今回作り上げたシステムはすべてをデジタルで処理するシステムでしたが、今後はデジタルで発生したトラブルをアナログで解決できるような仕組みも考えたいと思っています。またセンターとしてはもっと柔軟度の高い拠点にしたいとも考えています」(元橋主席)
競争激化に伴う市場の多様化、それに伴う新たな競合先の出現と提携先の変化、さらにはめまぐるしいまでに進むグローバル化、これらの事象は製薬業界においても決して対岸の火事ではないようです。そして市場の変化・多様化はますますロジスティクスを複雑にしていくことは間違いありません。
まだまだ業界全体でそれに取り組むという時点にまでは至っていないようですが、各メーカーは、この第一製薬の先進的な東京物流センターのあり方が示すように、それぞれ自らの足元を見つめ、自らのできる範囲で最善の仕組みを作り上げておくことが大事なのではないでしょうか。それはまた、すべての業種、すべての企業にいえるはずです。
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