
株式会社TKR
管理本部 情報管理部
統括部長
宇佐美 純夫 氏
モノづくりの競争優位を強化するために、アジリティと変化対応力に優れた全社最適システムを構想
日本のモノづくりを支える日本有数のEMSメーカー株式会社TKR。一層のリードタイム短縮、コスト低減を実現しつつ、アジリティ(迅速な意思決定)と変化対応力を強化するために、NECソフトのコンサルティングを活用して全社最適システムを構想。グローバルレベルでの競争優位を強化することでさらなる飛躍を目指す。
- プロフィール
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株式会社TKR
TKRは創業以来、光学、電気、電子、車載機器、事務機器などの発展と共に成長してきた。この間、カーオーディオ機器、プレス関連機器、スイッチ関連製品の一貫生産メーカーとして、開発技術およびその生産技術の蓄積に努め、現在はメカトロニクス技術、加工・組立技術など、優れた技術力を幅広く有する企業に成長した。特に、デジタル機器に対応した「精密、高密度、小型化」の部品加工および製品またはユニットの組立を得意としており、競争優位を発揮している。
- 所在地:東京都大田区多摩川2-29-12
- 設 立:1954年3月22日
- 資本金:13億3,560万円
創造とチャレンジ精神で日本有数のEMSメーカーとしてビジネスを展開
株式会社TKRは創業以来半世紀の間、「いつの時代にも社会のニーズにあった価値を生み出す会社でなければならない」という経営理念の下、日本のモノづくりを支えてきました。プレス加工を出発点に、現在では部品設計→試作→金型製作→プレス→モールド→基板実装→組立までの一貫生産体制を整え、高い生産技術力を誇る日本有数のEMS(Electronics Manufacturing Service)メーカーとして活動しています。
そのビジネスフィールドは、カーオーディオ、OA機器、デジタル・ビデオ関連機器、パソコン周辺機器、音響機器などへ拡大し、国内主要メーカーのビジネスパートナーとして、優れたモノづくりを担っています。例えば、同社売上の3割を占めるカーオーディオでは、メーカーの仕様に基づいた技術検討、設計、試作、量産試作までをTKR 本社が担当し、子会社のマレーシアTKRで金型製作、資材調達、プレス、モールド成形、基板実装、製品組立を行うことによって、開発リードタイム短縮とコスト低減を両立させています。
これはOA機器、デジタル・ビデオ関連機器、パソコン周辺機器、音響機器なども同様で、本社と国内5箇所、海外5箇所の生産拠点をネットワークすることで、得意先メーカーとの二人三脚の生産体制を整えています。管理本部 情報管理部 宇佐美純夫統括部長はTKRのビジネスについて、次のように話します。
「TKRは、カーオーディオ、電子デバイス、プレスユニットという3つの柱でビジネスを展開しています。最近のカーエレクトロニクスの変化を受けて、得意先メーカーは開発リソースをカーナビゲーション、モニターにシフトしています。したがって、音づくりが取り残されオーディオ開発が手薄になっているのが現状です。そこで我々が、音の設計からパネル制作まで、音づくり一式の制作を引き受けるようになりました。
電子デバイスでは、スイッチや操作部ユニットを中心にビジネスを展開しています。実は操作部ユニットは後発だったのですが、先行メーカーが国内生産に主軸をおいている間に、いち早く中国で生産することでコスト優位に立つと同時に、生産効率やデリバリー面でも優位を発揮することで、一気にシェアを広げることができました。
プレスは創業以来のビジネスですが、中国やアジアの技術レベルが上がりプレス加工だけでは成り立たなくなりました。そこで深絞りなどの精密プレスにシフトすると同時に、モールド、加工・組立までのプレスユニットを手がけることで付加価値をつけ、差別化しています」

写真1:DVD、ビデオカメラなどの部品
写真2:カーオーディオ製品
高速MRPエンジンを中核とした生産管理システムと、グローバルWeb-EDIシステム「EBWeb」の導入によって、全社レベルのIT化を推進
今日のように中国やアジアとのモノづくり競争が熾烈になるまでは、TKRでは本社は汎用機、国内拠点と海外拠点はオフコンという、個別最適のシステムでビジネスを展開してきました。ところが、「1990年代後半から、モノづくりの変化を肌で感じ始める」(宇佐美統括部長)ようになり、このままでは競争優位を維持できないと判断した同社は、全グループ統一したシステムの構築に取りかかります。
「生産拠点の大小に関わらず同一システムでネットワーク化することにしました。また、今までの製番管理方式では急な生産計画の変更などに対応できないため、MRP(Material Requirements Planning)を中心とした生産管理システムに移行することにしました。さらに、リードタイム短縮要求に応えるために、全拠点を結んだWeb-EDI の仕組みを導入することにしたのです。そして、統一したシステムをスムーズに運用するためにITガバナンス(当時はこういう言葉は知りませんでしたが)の徹底化に取り組みました」(宇佐美 統括部長)。
そこで、全拠点のIT担当者が参加するTIME(TKR Integrated system for Manufacturing and Engineering)推進会議を年1回定期的に開催することにしています。そこではIT戦略の検討からローカルのSEのレベルアップの方策、各拠点のノウハウも共有します。こうして、1999年から全社システムの統一化を推進。MRPをキーワードにした生産管理システムのリニューアルと、受発注を迅速に行うWeb-EDIシステムの構築を開始します。
「当初、生産管理システムではパッケージの導入を考えていたのですが、カスタマイズが多いことがわかり断念。そこで、NEC製高速MRPエンジンの提供を受けてすべて自前で開発することにしました。その結果、資材の所要量計算のシミュレーションを行えるようになり、生産計画が変わって部品が不足しても迅速に対応できるようになりました」(宇佐美統括部長)。
また、リードタイム短縮を実現するための得意先の発注方法の変更に応じて、従来のFAXを中心とした受発注方式からWeb-EDIへの移行も実現しています。
「全拠点を結ぶWeb-EDIでは、NECソフトが提案した『EBWeb』に即決しました。基本的にはカスタマイズしたくないので基本仕様が充実していること、そして英語版がある点を評価しました。さらに、当時TKR側の仕様が固まっていませんでしたので、作りながら変更し、かつ短期間で導入できるようインターフェース仕様を公開してもらい、さらにその使い方を指導してもらうという条件を飲んでいただけたことが決め手でした。NECソフトに指導してもらいながら、2000年5月にカットオーバーしました。短期間でしたがノートラブルで稼動できたのも、NECソフトのおかげと感謝しています。これによって、発注リードタイムを3~4日短縮することができ経費削減も実現しました(図1参照)」(宇佐美統括部長)。

図1:グループ全体でリードタイム短縮とコスト削減を図る「EBWeb」
こうした全社レベルのIT化に際しては、統一システムの基本部分はローカルでは変更できないようにした上で、サブシステムは各拠点でも変更できるよう集中と分散を行っています。言語も日本語、英語、中国語を用意することで、エンドユーザーがスムーズに操作できるように工夫しています。また、バッチ処理では自動運転機能や、本部で予め百数十のジョブのモジュールを用意し、工場ごとにそれらを組み合わせて使えるようにするなど、生産形態の違う拠点間でのシステム統合を行っています。
さらなるリードタイム短縮、コスト低減への対応に備えて
その後、世界の工場として中国・アジアが力をつけることによるコスト低減圧力、商品ライフサイクルの短期間化に伴う一層の開発リードタイム短縮など、日本の製造業は厳しい試練の時期が続いています。また、日本の競争力を維持するために、海外シフトした工場の国内回帰など、新たな動きも出てきています。こうした変化に対応できない企業は淘汰されるほかありません。そのためTKRでは前述のような全社的なIT基盤を整備することで、リードタイム短縮、コスト低減などを行ってきましたが、さらなる対応を求められているのが実際です。
「ここ数年の間で、日本のメーカーは何でも海外生産にシフトするという体制から変わってきました。得意先、サプライヤーともに、難易度の高いものを国内に戻し始めています。ただし、安い部材や部品は海外調達として残しますので、物流費、在庫リスクはサプライヤーが抱えなければなりません。また、ほぼサプライチェーンの選別を終えた得意先メーカーは、自社の開発リソース不足をサプライヤーで補完するようになり、我々サプライヤーはどれだけノウハウを提供できるか、どれだけリスクを負担できるかが問われるようになりました。単なる部品供給では済まなくなったのです」(宇佐美 統括部長)。
グローバルレベルでの開発競争が激化するにつれ、従来メーカー自ら行っていた開発業務の一部をサプライヤーに委託せざるを得ない状況になっているのです。ますます得意先とサプライヤーの密接な二人三脚の生産連携が求められるようになりました。
「最近は、当日発注当日納品など、さらに極端なリードタイム短縮が求められています。そのためには、リスク軽減のために一層の在庫圧縮に取り組まなければなりません。また、30分ごとに発注情報を流すなど、リアルタイムに近い情報共有も求められています」(宇佐美 統括部長)。
今までの全社的IT 基盤では、こうした状況に対応できなくなることは明らかでした。そこで、TKRでは、その後の情勢変化に対応するための研究も怠りませんでした。
全社最適化システムの構想にNECソフトのコンサルティングを活用
NECソフトは4年前から全拠点が参加するTIME推進会議に参加し、3年前のSCM構築の際にはSEがTKR国内外の情報担当者を対象にしたセミナーを開き大変好評を得ています。そして、2年前にはBC/DR(Business Continuity &Disaster Recovery)~ストレージ活用、バランススコアカード(BSC)に関するセミナーをグローバルで展開して人材育成の面でお手伝いするなど、TKRのさらなるグループ全社システムの情報化を支援してきました。
「これから構築する全社最適化システムは、スピード化やペーパーレス化などのビジネスニーズへの対応だけでなく、内部統制、セキュリティ、 BC/DRにも対応しなければなりません。これらを外したシステムでは社会的責任を果たすことができないからです。限られた予算と人員ですが、これらを前提にIT 戦略を考えなければなりません。そのために、どこから手を付けたらいいのか優先順位を考える必要があります。私たちだけでは、そうした優先順位をつけることは難しい。どうしても客観的に判断できる第三者の視点が必要となります。そこで今までのお付き合いの中で信頼関係を深めてきたNECソフトにコンサルティングをお願いしたわけです」(宇佐美 統括部長)。
2005年秋、情報化企画フェーズの経営環境分析を行い、中期経営戦略の策定までのコンサルティングを実施(図2参照)。TKR担当者と一緒に作業を進める中で、どうやってアウトプットを導き出すのかなど、IT 教育面での支援も行っています。

図2:全体最適システム構築を行うための情報化企画フェーズのプロセス
そして2006年4月、TKRグループ全体のコストダウンを目的に、TGCI(TKR Global Cost Improvement)2006がスタート。調達コスト10%削減、生産効率および歩留まり10%削減、物流費・ムダな経費10%を削減するために、ビジネス部門の3名の統括課長が各プロジェクトリーダーとして推進するグローバルなプロジェクトです。
変化とスピードをキーワードに全社最適化システムの構築を計画
今モノづくりは世界的に質的な変化が起こっており、資材調達と生産面において変化対応力とスピード対応力の強化が求められています。そのためには、経理や総務も含めたすべての業務スピードを上げることが必要です。その変化対応力とスピードを加速するツールとしてITを全面的に活用しなければなりません。
「TGCI2006では変化とスピードをIT戦略のキーワードとして、モノづくりに関する量的、質的変化をリアルタイムで把握する仕組みの構築を目指しています。NECソフトには情報化企画フェーズの段階やTGCI2006プロジェクト立ち上げ時から支援していただいたこともあり、若手社員が育ってきましたので目的の半分は成功したと考えています。そして、もっと大きな変化にも対応できる道筋がはっきり見えてきました。まずグループ全体で部品表を中心とした統合DBを構築することと、グループ全体の会計システムを統合して日次で全拠点の経営情報がわかるようにすることが必要であることが明らかになりました」(宇佐美 統括部長)。
今回のTKRとNECソフトのコンサルティングを通じた協同作業によって明らかになったIT戦略は、次のようにまとめることができます。
- 社長は本社の経営情報を毎日見ることができるが、各拠点の経営情報収集は日次に対応できていない。各拠点にも早急に管理会計をサポートして、全拠点の経営情報を日次で提供できる仕組みを構築する。
- 自前のワークフローを全拠点に展開し、グループ間の連携、内部統制を含めたグローバルなワークフローを構築する。内部統制を図りながら、経費削減とスピードアップを実現する仕組みを構築する。
- 本社の調達、設計部門が関わらないと、各製造拠点でコストダウンを独自にできる部分は限られてしまう。グループ全体で取り組むために、TKR全体の品目DBを構築して、環境情報、原価情報などモノづくりに必要な全情報をいつでもどこでも検索できるようにする。
「経営情報に関しては本社では日次に対応できますが、各拠点では日次対応ができません。それを阻んでいるのは、分散システムになっているからであり、統一した管理会計支援システムを構築しなければなりません。また、リアルタイムな情報共有を行うために、現在稼働中のトランザクション監視システムの強化を図ります。予算と人員が限られていますので、これから優先順位に従って取り組んでいく計画です」(宇佐美 統括部長)
Column
TGCI2006調達コスト削減プロジェクトの推進

株式会社TKR
調達コスト削減プロジェクトリーダー
生産本部 資材一課
統括課長
小島 康志 氏
いきなりプロジェクトリーダーに指名され、最初はとまどいました。「調達コスト10%削減」が目標なので、最初はそのまま各拠点にアピールしたのですがうまく伝わりませんでした。今までこうした活動をやったことがなかったので空回りしていたのです。NECソフトのコンサルティングを受ける中で、空回りしていた原因がわかりました。どうやってプレゼンを行ったらいいかわかっていなかったのです。
単にスローガンを訴えるだけでなく、価格が適正なのか、調達コストは適正か、その原因を考えながら解決策を示すことが必要だったのです。目標が高いので、最初の反応は厳しいのですが、単に部材の調達コストだけでなく在庫も含めた削減であることを訴えることで、理解してもらえるようになりました。 2ヶ月かけて国内外の工場を回り、やっと筋道がついたという段階です。勉強させてもらいながら活動しています。
コンサルタントより

NECソフト株式会社
営業本部 コンサルティンググループ
シニアコンサルタント
井出 昌志
TKR 様とのお付き合いは、3年前のSCM構築の際にセミナー講師として、フレキシブルなMRPの概念を説明したことがきっかけでした。その後、コンサル部門に異動し、情報戦略立案のお手伝いをさせていただく機会を賜りました。情報戦略立案の第一ステップである経営環境分析は、経営戦略策定を得意領域としている仲間のコンサルタントが、バランススコアカードの手法を活用して、TKR様と一体となって中期経営戦略としてまとめました。第二ステップでは、第一ステップの経営戦略をベースに、TGCI2006プロジェクトと整合をとりながら、経営に役立つIT戦略立案のお手伝いをさせていただき、重点情報化テーマの抽出を行いました。私たちの活動がお客さまの競争優位確立に役立つことを願っています。
営業担当より

NECソフト株式会社
製造ソリューション事業部
第一製造SIグループ
製造業セールスマネージャー
畠山 杉夫
TKR様とは、SE時代含め、約10年間担当させていただいております。いつも感心させられることは、宇佐美統括部長様のIT化に対するチャレンジ精神と意思決定の速さであり、私自身も常日頃から勉強させていただいております。今後とも、NECソフト全社一丸となり、お客さまの経営に寄与する真のIT活用(儲かる仕組み、CSR(企業の社会的責任)を果たす仕組み)をご支援すると共に、NECソフトが生涯に渡りお客さまの良きパートナーであることを目指していきたいと考えています。
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