
塩尻市
総務部 秘書広報課
課長補佐
鳥羽 嘉彦氏
市民の声と管理者の声を反映したシステムでサイトの使いやすさと管理の効率化を実現
誰にでも利用可能で、必要な情報にたどり着けるWebサービス─自治体のWebサイトには、一般企業や商用のサイトとは異なる、厳格なアクセシビリティの基準や、それに付随する様々な課題が存在する。こうしたアクセシビリティを確保しつつ、サイトの更新作業の効率化も図りたい塩尻市役所では、これまでのWebサイトを一新するプロジェクトに取り組んだ。プロジェクト成功の影には塩尻市役所担当者の情熱と、それをサポートするNECソフトのソリューションがあった。
- プロフィール
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塩尻市役所
- 所在地:長野県塩尻市大門七番町3番3号
- 総人口:68,429人
- 世帯数:25,221世帯(2008年3月1日現在)
市民の視点で行われたサイトのリニューアル
長野県塩尻市。人口約68,000人、ワインと漆器が名産であるこの田園都市は、比較的早くからインターネット活用に取り組んできました。1995年には市のWebサイトを開設、翌1996年には塩尻インターネットという市民向けプロバイダサービスを開始し、無料のダイアルアップサービスを提供しています。

塩尻市
総務部 秘書広報課
広報広聴係 主任
百瀬 敬 氏
当初Webページ作成ソフトを用いていた市のWebサイトは、2001年にはいち早くCMS(コンテンツ管理システム)を導入して制作の効率化を図りました。しかし、ネット利用が拡大するにつれ、様々な課題も明らかになってきました。まず、コンテンツ利用者側である市民にとっての使い勝手の問題です。
「従来のサイトでは情報が基本的に担当課別になっており、どこにどの情報があるのか分かりづらいという意見が寄せられていました。」(総務部 秘書広報課 課長補佐 広報広聴係長 鳥羽 嘉彦氏)。
見やすさについても課題がありました。旧サイトで用いられていたCMSでは、図版や写真の表現能力が弱かったため、ビジュアルを活かしたページは各担当者がHTMLを直接記述し、CMS用サーバーとは別のサーバーに置くようにしていました。その結果、コンテンツが分散して管理しづらくなり、見栄えもまちまちになっていたのです。これでは、自治体サイトに求められる「Webアクセシビリティ」(障がい者や高齢者にもWebコンテンツを利用しやすくすること)を高めるのも容易ではありません。
またコンテンツを制作する市役所にとっても、HTMLが分からないと写真や表組みが載せづらいという点も悩みでした。HTMLがわかる人に頼まなければならないとなると、どうしても情報発信の敷居が高くなってしまいます。こうした理由から塩尻市役所は、CMSの刷新を決定しました。
必要な情報をカテゴリや検索ですぐに取り出せる新サイト

塩尻市役所のWebサイト。市民に必要な情報にすばやくアクセスできる工夫が随所に施されている
新しいCMSによるWebサイトに求められるのは、利用者が必要な情報にすぐにたどり着けること。加えて、情報をすばやく正確に、なおかつ簡単に発信できると同時に、アクセシビリティに十分対応していること。こうした前提条件に対応すべく、NECソフトは、新しい情報提供システムの開発を進めました。
塩尻市役所では旧CMSを導入する際にサイトの運用体制を整えており、これは新しいCMSでもそのまま活かされることになりました。市役所のほぼ全職員にCMSのアカウントが割り当てられており、その数は550を超えます。コンテンツは各担当課の職員が作成し、課長が承認すれば、すぐにコンテンツのアップロードが行われます。 新しいサイトでは、コンテンツのカテゴリ分けを徹底的に見直し、「目的別」「出来事」という切り口からコンテンツにたどり着けるようにしました。「目的別」というのは各種届け出や産業、観光といった市の業務に沿ったもの。「出来事」は、「妊娠・出産」「子育て・教育」「引っ越し・住まい」というように、市民の暮らしの中での重要イベントごとにコンテンツを整理しました。コンテンツを作成する際にはカテゴリを指定しておくだけで、適切に分類されて公開される仕組みです。もちろん、担当課に応じて、実際の問い合わせ窓口がどこかを各コンテンツに明記する工夫もなされています。
コンテンツを属性で管理することにより、カテゴリ以外の情報の見せ方も分かりやすくなりました。特に大きく変わったのは、イベントや参加者募集の扱い。これまでのサイトでは、イベントや参加者募集の情報をトップページにだけ載せていましたが、これだと新しい情報がアップされるとどんどん下に追いやられ利用者の目に留まらなくなってしまいます。新サイトでは、各コンテンツに対して「イベント」「募集中」といった属性を付加しています。
「こうすることでトップページだけでなく、カテゴリの分類ページなどにもイベント情報を掲載できるようになりました」(総務部 秘書広報課 広報広聴係 主任 百瀬 敬氏)。
サイト内検索では、PDFやWord形式の各種申請書内に含まれるキーワードでもコンテンツを探せるようになり、利便性が大幅に向上しました。
Webアクセシビリティの高いコンテンツを負担なく制作

塩尻市は1996年より、市民にインターネット接続サービスを無料で提供。早くからインターネットサービスへの取り組みを積極的に行ってきた
各コンテンツごとの表現力や見やすさも進化しました。先に述べたように、以前は写真や表組みのレイアウトの自由度があまり高くなかったのですが、新しいCMSではWordやExcelからそのままコピーアンドペーストでコンテンツを作れるようになりました。お祭りの様子を臨場感溢れる写真で伝えたり、施設一覧を見やすい表にするといった作業を、どの職員でもできるようになりました。
「簡単にコンテンツを作って情報発信できるようになった分、他の課に見劣りのしないものを出そうという良い競争心が芽生えているようです」(鳥羽氏)。
コンテンツの表現力が強化されると、過度に派手なレイアウトになり、結果的に見づらいページになってしまうこともあります。そこで、塩尻市役所では見出しや配色などのルールを設定し、コンテンツに対して自動的に適用されるようにしました。これにより、サイトの表現力と統一性を両立することが可能になりました。アクセシビリティに関するルールも設定されているため、個々の職員が意識せずとも、アクセシビリティの高いサイトを構築できています。
「読み上げソフトを使っている方にもページの内容が分かりやすいよう、画像には必ずALT属性(画像の説明を記述したテキスト)を付けるといったアクセシビリティに関するルールがあります。そこでCMS内で自動的にコンテンツの内容をチェックし、ALT属性のないものはアップされないようにしています」(百瀬氏)。
1つのコンテンツを複数のメディアで利用する
自治体からの情報発信はどのようにあるのが望ましいのでしょうか。
「お年寄りなら、Webサイトより広報紙の方が利用しやすいでしょう。自治体は紙、Web、テレビ、有線放送など様々なメディアを使って情報を流し、市民は自分に適したメディアで必要な情報を取得できるのが望ましいあり方だと思います」(鳥羽氏)。
塩尻市役所のWebサイトもそうした考えに基づいており、1つのコンテンツを複数のメディアから利用するワンソース・マルチユースを進めています。Webサイトはパソコンからだけでなく携帯電話からもアクセスできるようになっており、一部のコンテンツは電話やFAXでも取り出せます。コンテンツをアップする際に「携帯電話」「音声」「FAX」といった属性情報を付けておけば自動的に適切なデータに変換されるため、発信側は手間をかけずに複数メディアに対応できることになります。
即時性が要求される情報への対応としては、携帯サイトを通じて「緊急メール配信サービス」も提供しています。これは火災や事故、災害、気象、不審者、行方不明者についてのメールを登録ユーザーに随時送信するもので、一般の方々だけでなく、消防団員、農家、学校関係の方々など幅広く活用されています。こうしたサービスは最近では多くの自治体で行われるようになっていますが、大量のメールをタイムリーに送信するのは、携帯電話事業者による規制もあり、意外に難しいという課題があります。NECソフトは高性能なメール配送エンジンを採用した一斉配信システム「電言郵便」をもとに、システムを構築しました。これにより従来であれば数時間かかっていた緊急メールの配信を数十分に短縮。よりタイムリーに緊急メールを送信できるようになりました。
市民が気軽に参加できる行政のあり方とは
塩尻市役所のWebサイトには、「声の広場」という市民からの意見・要望を受け付けるコーナーがあります。これはNECソフトが提供する電子行政相談システム「参声広場」をもとに作られました。観光イベントの時期から、市政への意見、Webサイトの改善まで、幅広い声が寄せられますが、それらに対して職員は1週間以内に答えなければならないというルールが定められています。
「市役所に電話で相談をする場合、担当者個人とのやり取りになりがちです。声の広場ならば、質問を市役所全体で共有できますから、責任のある回答を得られる保証があります。同じようなことを質問したいと思っていた人も、FAQによりサイト上ですぐに回答にアクセスできます」(鳥羽氏)。
塩尻市役所のWebサイトでは、各種届出や申請書の書類をPDFだけでなく、WordやExcel形式でも配布していますが、これも市民からの要望を受けての改良です。
「市民から意見を受けてきちんとフィードバックを返すのは、行政の仕事の中でも最も大切なことの一つです。市民と一緒になって行政を改善していく。それが、これからの行政に求められているものでしょう」(鳥羽氏)。
システム担当より

NECソフト株式会社
長野支社
地域ソリューショングループ リーダー
前島 昭彦
NECソフトでは、塩尻市役所様と協力して、JIS規格に準拠したWebアクセシビリティに対応し、市民の皆様が使いやすい行政情報提供サービス構築のお手伝いをさせて頂いております。参声広場や電言郵便といったソリューションは、こうした協力関係の中で、日々運用されているお客さまの声から生まれたものです。これからもこうしたサービスを通じて、行政と市民を繋ぐ架け橋になりたいと考えています。
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