
高知工科大学
電子・光システム工学科
教授・工学博士
矢野 政顕様
指紋認証を“ドアコントロール”に先駆的活用
- プロフィール
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高知工科大学
1997年開学。工学部と大学院工学研究科を設置。工学部は電子・光システム工学科のほかに、物質・環境システム工学科、知能機械システム工学科、情報システム工学科、社会システム工学科から構成される。産・官・学の共同プロジェクトにも積極的に取り組む。高知県土佐山田町。
学科独自にICカードの補完として指紋認証を採用
高知工科大学は新しい大学であるだけに、設備や教育システムでは新しい試みに積極的に取り組んでいます。中でもコンピュータ・リテラシーに力を入れ、1年次の学生全員を対象に、コンピュータ操作の習得などを目的として、ノート型パソコンの貸与を行っています。また3つの教育・講義棟にそれぞれあるワークステーション室には、合計300台以上のワークステーションを設置して、さまざまなレベルに応じた情報処理の教育を実施しています。
学生たちが恵まれた施設や機器を十分に活用して充実した学生生活を送るうえでは、一定のセキュリティルールのもとに各自がセキュリティに対して正しい認識をしっかりともって遵守していくことが欠かせません。そのため本学では全学的に各施設や機器へのアクセスにICカードを採用しています。一方でICカードと併用して、私が属している電子・光システム工学科では独自の考えにもとづいて指紋認証システムも使用しています。
情報セキュリティで最も基本的になるのは、いうまでもなく人が大切な資産に接したり情報にアクセスするのに、その権限をもっているユーザーであるかどうかを個人認証することです。例えば、ユーザーではない人によって「なりすまし」が行われたりすると、機器が不正に使われたりシステムに侵入されてデータが破壊・漏えい・流出したりするリスクが発生しないとも限りません。
そのため、パソコン室や研究室への出入りに際しては、学生本人であるかどうかをチェックして入室管理を行う必要があります。もし鍵を使うとすると合鍵の数だけでも相当数となり、それぞれの研究室を管理するのに大変な労力がともないます。この研究室のドアコントロールに、電子・光システム工学科は指紋認証を採用しているわけです。
指紋認証の導入を検討して、最終的にはNECの指紋ドアコントロール「FingerThrough」を採用しました。指紋認証がICカードと大きく異なるのは、カードをうっかり忘れたり紛失してしまって、アクセスできなくなる不便さがないことです。また他人のカードを用いてなりすましが行われることもありません。導入費用も比較的安価で済みます。
人を識別するうえで、指紋は絶対的な価値をもっていると考えています。よく言われているように、2人と同じ人がいない「万人不同」であり、一生変わらない「終生不変」であるのが特徴です。当学科では5室に指紋認証を採用してきましたが、これまでの使用状況や使いやすさから判断して新たに8室を追加する計画です。
欠かせない指紋認証についての教育
指紋認証が行われているパソコン室では400人、研究室では数10人の学生たちの出入りがあります。入室の際に、部屋の入口に設置された小さなパネルに指を当てると認証が行われ、ドアコントロールが実施されます。
指紋認証を行うには、学生たちの指紋情報をあらかじめ登録する必要があります。登録した学生だけが、許可された部屋に許可された時間範囲内で自由に入室することができるようになるわけです。
学生たちには、あらかじめ指紋認証に対するオリエンテーションを行っています。基本的な知識として、指先の指紋の皮膚が盛り上がっているところを隆線といい、それらが途中で切れていたり、1本から2本にわかれているところがあり、それぞれ端点と分岐点と呼ばれ、両方を合わせて特徴点ということ、特徴点は指の中心部に多く集まることなどを説明します。登録や照合に使うのは、これら特徴点の情報だけであり、指紋の画像データはその情報を抽出するために読みとるだけで、保存はしていないこと、また、この特徴点の情報から指紋の画像データを復元できないことなども説明しています。
実際の指紋情報の登録は、左右各1本づつ行います。1本の指について3回指紋を読みとり、特徴の抽出を行います。指紋の状態によっては、登録や照合が難しい場合もあります。たとえば、指先が汚れていたり、皮膚が乾燥していたり、指先が濡れていたりすると、失敗しやすくなります。
また指の置き方が適切でないために認証に失敗する場合もあります。なるべく指紋の中心部がセンサ面に接するようにして、特徴点の情報を多く読みとることが必要です。指紋認証システムをスムーズに運用するためには、正しい指の置き方の指導も欠かせません。
各室の入口に設置された指紋ドアコントロールパネルは、管理PCとLANで接続されてネットワークを実現しています。各パネルの運用状況は、管理PCにリアルタイムに表示、記録されます。履歴情報を表形式で編集し、部屋や利用者ごとに検索したりして管理しています。特に毎日のメンテナンスは必要ありません。
情報セキュリティに対する基本的な認識の必要性
電子・光システム工学科の指紋認証以外に、本学ではICカードをワークステーション室などへの入室管理のほかにさまざまなセキュリティに幅広く活用しています。学生の出席管理として、学生の出欠状況をハンディターミナルで読み取って登録するようにしています。またキャッシュレス機能として、食堂や売店のPOSレジ、自動販売機、自動券売機、証明書自動発行機、コピー機などをプリペイド方式により利用できます。
図書館の貸出・返却にもICカードが使われています。また教職員が事務システムへアクセスする際に、事務処理用端末に接続したICカードリーダライタにより本人認証を行います。駐車場管理にも使われています。ICカードが全学的な情報インフラとして機能することで、学生たちの高いセキュリティ意識の醸成に役立っているわけです。
なお本学は、国内でも最速級のATMをバックボーンとするキャンパス情報ネットワークを構築しています。学内のほぼすべての施設にネットワーク回線を敷設し、情報コンセントや光ファイバのコネクタを設置していますので、どこからでも学内LANやインターネットにアクセスできます。また入学時に全員にE メール・アドレスを付与しておりますので、学生は学内のワークステーションやノートパソコンを利用して、レポートの提出や先生への質問、友人同士の連絡や情報交換をメールで行っています。
このような教育環境の中で、学生たちが育んだセキュリティに対する基本的な認識は、将来いろいろな社会の分野で活躍していくためにも欠かせないコンピュータ・リテラシーとなるものです。電子・光システム工学科で使用している指紋認証を、ネットワーク時代の個人認証として学生たちが正しく理解し、正しく使えることが重要であると考えています。

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