
木賊 勝信
IT活用担当部長
業界一丸となって部品購買と生産管理を統合
全国の配電盤メーカー450社が加盟する社団法人日本配電盤工業会(JSIA)は、2002年2月からNECソフトが開発したASPサービスを活用した生産管理/EDIシステム「e-JSIA (イー・ジェシア)」を本稼動させました。業界の体力強化と本来のリストラクチャリングの推進が目的です。生産管理/EDIシステムの導入は、日本流のケイレツ単位とは異なり、配電盤業界が一丸となって取り組む貴重なケースです。比較的小規模な企業の連合である業界の取り組みなので、他業界にも活かせるモデルケースとして注目できます。
- プロフィール
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社団法人日本配電盤工業会
- 所在地/東京都港区芝大門2-10-2
- 所管/経済産業省
- 事業/規格の制定普及。耐熱形配電盤等の認定。配電制御システム検査技能審査試験・JSIA優良工場認定の実施
各社で共通する資源を共有できるシステムとして

松山 明 業務部長
電気機器へ供給する電気を受変電設備としてシステム的に監視・制御する配電盤(高・低圧配電盤、分電盤、制御盤など)は、ビルやマンションをはじめ、工場プラント、ライフラインなどの電気系統の中枢として重要な役割を果たしています。配電盤業界の企業規模は平均で50人前後と小規模な会社が大半です。中堅で100人、大手でも200~300人程度と大きくはありません。
「受注形態がオーダーメイドなので標準化が難しい面がありました。さらに、部品を供給する機器メーカーが用意する部品点数が100万点ともいわれ、標準化の大きなネックになっていたのです。しかし、各社が独自のシステムを組むよりも、業界で一丸となれば一層大きなコストダウンが図れます」と、松山明業務部長は語っています。
「e-JSIA」は、日本配電盤工業会加盟の配電盤メーカーと、配電盤の構成部品を供給するディーラー(機器代理店)、機器メーカー間の、部品などの受発注や購買管理、および社内における生産管理をASPで可能にするサービスです。NECソフトは、その企画からシステム開発、運用までを一貫してサポートしてきました。
2001年春からテスト運用を開始し、2002年1月には無料相談室も開設するなど、業界への浸透を図っています。「スタート当初の導入メーカーは20 社ほどですが、初年度目標は100社を考えています。また、このシステムは特に経営者からの評価が高く、意欲のある企業ならば日を置かず利用を決断するはずです。JSIAは今後3年以内に全会員の利用加入を目標に考えています。日本流のケイレツの中でEDI化を進めるケースは多いですが、業界でまとまるのは珍しいことです」と、木賊勝信IT活用担当部長は語っています。
各社の業務を見直してみると、実は共通する部分が多くあります。その共通部分の資源を各社で共有できるシステムがあれば、コストが削減できると同時に、共通化で浮いたリソースを新しい製品開発に振り向けることができるはずです。配電盤メーカーは電気・機械の総合力を備えており、コスト以外で競争する方向に転換することもできます。
そこで、1997年から業界のEDI化を目的に、従来バラバラだった部品コードを業界で統一化しようという作業の中で、出会ったのがASPでした。 ASP方式を採用すると、インターネットに接続したパソコンとプリンターがあれば、安価なシステム運用費の負担でEDI化が実現できます。NECソフトとはEDIやASPの考え方から始まり、どうしたら使いやすいシステムになるかについて1年以上やりとりが続きました。
e-JSIAは全国中小企業団体中央会の補助金事業である「平成12年度情報技術活用型経営革新支援事業/中小企業向け業務アプリケーション開発事業」に認定され、補助金を得ています。競争率3.6倍の難関でしたが、運用までを充分に考えて申請したことが評価されたようです。
設計者の負担を大幅に軽減する電子カタログ
JSIAが目指すシステムは、部品の電子カタログと、配電盤メーカーの生産管理システムを連携させたEDIです。そのためワーキンググループを発足させ、まず各社の業務の共通部分を洗い出しました。配電盤メーカーの業務の流れは、1. CADを用いて図面を作成し、2. ディーラーから部品を調達する。さらに、調達した部品で、3. 配電盤等の受変電設備を組み立て、4. 試験して、5. 納入する──というものです。
このうち、共通部分が多く、各社の賛同を得られやすいのが、2. のディーラーから部品を調達する購買管理です。そこで第1のねらいとして、部品の購買管理に活用して業務の効率化に最大限活かすことを考えました。
購買管理のEDI化では、部品メーカーそれぞれで異なる部品コードの統一が不可欠です。紙ベースのカタログを電子化する電子カタログ構築でも、グローバルなコードがベースになります。そして、配電盤メーカーの購買管理システムと電子カタログが連携できれば、利便性は非常に高まります。JSIAでは、(社)日本電機工業会(JEMA)の協力のもと、電子カタログの登録を2002年度中に80~90%に高め、2003年度には100%にもっていく計画です。
配電盤メーカーが使っている紙のカタログは、電話帳ほどの厚さがあります。設計者は部品表の作成の際、このカタログを字引のように参照しなければならないので、大変な労力がかかります。「一般に配電盤は30年程度使うため、古いカタログも捨てられません。20~30年前に納めた配電盤の部品を調べるだけでも大変な作業です。e-JSIAを導入すると、部品選定でかかるこうした設計者の負担を大幅に軽減できます」(木賊部長)
従来のような誤解や誤記による部品の発注ミスもなくせます。また、部品の先行手配もできます。「配電盤の部品は点数が多く量産化できないものもあるため、部品メーカーに在庫がないことが珍しくありません。先行手配をうまく利用することで製品の納期を30~40日早めることが可能です。一方、これまで “どんぶり勘定”的な部分があったとすれば、原価管理機能によりシビアに管理できるようになります。100人規模の配電盤メーカーで4人程度必要だった購買管理要員も、1~2人の作業で可能になり、他の要員はより高度な業務を担当できます」(松山部長)
CADシステムのASP提供が最終目標
e-JSIAが目指す最終ターゲットは、配電盤メーカーに特化したCADシステムを開発し、ASPで提供することです。このため、ワーキンググループには当初からCADメーカーに参加してもらいました。
配電盤業界は、比較的早い時期からCADシステムを導入しています。しかし、各社で使っているシステムはバラバラです。また、各社が独自に構築しているので、EDIとの連携が困難ですし、メンテナンスや保守にも手間がかかります。 そこで、e-JSIAでCADソフトも提供し、購買管理と連携したシステムを作ろうというわけです。これにより、業務の標準化が促進されると同時に、従来、多大なエネルギーを割いていたメンテナンスや保守も不要になります。JSIAでは、2003年度にその前準備を終了し、2004年度には完成度の高いシステムを構築する計画です。
「こんなに短期間で稼動させたのは珍しいケース。ASP方式による生産管理/EDIシステムは、他の業界にも転用可能でしょう」(松山部長)「リストラクチャリングの本来の意味は、再構築であって、単なる人減らしではありません。部品ディーラーさんの協力も、『中抜き』ではなく、一緒にプラスになることをやりましょう、と呼びかけたから得られたのです。e-JSIAの目的は、業界が貴重な人材をカットするのではなく、その人材をさらに高度な部門で活用してもらうことです」(木賊部長)
配電盤業界は、決して大きな業界ではありません。それだけに、各社が協力して業界ノウハウを結集すれば自社のシステムの業務改善につながり、しかもASPというソリューションを活かすことで、最大効果を発揮できることは確かなようです。

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