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株式会社産経デジタル

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株式会社産経デジタル
システム部 部長
脇 雅英

SOAを活用してデジタルメディア基幹システムを半年でリニューアル。業界初の新聞とインターネットを融合した「新聞2.0」を開発

新聞とインターネットを融合した「新聞2.0」を実現した株式会社産経デジタル。既存の基幹システムから半年という短期間でのリニューアルを支えたのが、新聞業界での実績と先進的なSOAを駆使したNECソフトだ。ベンチャースピリットで開発された「新聞2.0」の始動によって新たなジャーナリズムの展開が期待される。

プロフィール

株式会社産経デジタル

株式会社産経新聞社のデジタル事業を引き継ぎ、産経新聞グループ各媒体のWebサイト運営や、ポータルサイト・モバイル端末などへのニュースコンテンツなどの配信を手がけている。出資企業は産経新聞社と株式会社日本工業新聞社、チームラボビジネスディベロップメント株式会社の3社。新聞社の取材力やニュースコンテンツに、ネット関連の最新の技術力・ノウハウを加え、ユーザーのニーズにこたえるサービス提供を進めている。

  • 本社所在地: 東京都千代田区大手町1-7-2
  • 設立: 2005年11月1日
  • 資本金: 9億1,000万円

新聞とインターネットを融合した「新聞2.0」にチャレンジ

2005年の日本の総広告費は約6兆円(前年比1.8%増)、そのうちインターネット広告費は2,808億円と前年比54.8%の勢いで増加しており、約4,000億円の雑誌広告費(前年比0.6%減)を追い越すのは時間の問題です。まだテレビ(約2兆円、前年比0.1%減)と新聞(約1兆円、前年比1.7%減)には及ばないものの(電通調べ)、2004年にラジオを追い抜いたインターネットの増加率を考えると、テレビや新聞も安閑としていることはできません。

インターネットは急速にメディアとしての存在感を高めていますが、コンテンツ生産という面では依然としてテレビや新聞に及びません。質の高いコンテンツを提供して読者を惹きつけることができなければ、いずれ頭打ちになることは想像に難くありません。一方、テレビや新聞も、勢いのあるインターネットをいかに活用するかが、今後の成長戦略に欠かせないポイントとなっています。

特に新聞は、大勢の記者が現場を取材してニュースというコンテンツを生産するしっかりとした仕組みを備えています。そのコンテンツを新聞紙面だけでなく、インターネットや携帯サイトなど他のメディアに再利用できれば、新聞の強みをさらに発揮することができます。産経新聞グループのデジタル事業を担う株式会社産経デジタルのシステム部脇雅英部長は、こうした新聞の強みを活かしたユーザー参加型のニュース情報サービス「iza(イザ!)」の構築を通じて、新聞とインターネットの融合に取り組んだ経緯を次のように話します。

「産経新聞は部数を伸ばしていますが、新聞業界全体を見ると、発行部数は1997年頃から減少傾向にあります。また、最近は新聞社のサイトでニュースを見るよりも、ポータルサイトでニュースを見る人が増えています。1つの記事を面白さで見るようになってきたからだと思われます。面白さを追求するには、読者の意見を直接聞くことができる仕組みが必要になってきました。これまでのマスメディアは一方通行でしたが、ブログなどの出現で双方向性を確保できるようになり、読者との双方向を実現した『新聞2.0』への移行が可能になりました。それが、2006年6月にスタートしたユーザー参加型のニュース情報サービス『iza』です」(脇部長)。

新聞社として、活字メディアとインターネットの本格的な融合をいち早く実現したのが、双方向性を備えたマスメディア「iza」というわけです。

コンテンツの縦割りを打破して新たなビジネスチャンスに対応

産経新聞グループのデジタルメディアへの取り組みは、1996年4月にスタートした「ZAKZAK」、同年5月に始まった「SankeiWEB」に遡ります。ただ、当時の記事はすべてそれぞれHTML化し、Webに掲載している状態だったといいます。

「産経新聞では10年ほど前からデジタル事業をスタートし、2000年には本紙と連動した『Sankei WEB』、サンケイスポーツ系の『SANSPO.COM 』、夕刊フジ系の『ZAKZAK』、そして日本工業新聞系の『JIJweb(現Fuji Sankei Business i.on the web)』といった、複数のWebメディアをデジタルメディア本部として統合しました。ただ、コンテンツの制作・編集はメディアごとに行っており、複数の新聞からニュースを集めて再利用するのが困難でした。新たなビジネスチャンスに対応するには、記事を一元管理して容易に二次利用できる制作・編集システムの再構築が急務でした」(脇部長)。

「今まで100余りの編集・配信アプリケーションがあり、それによって作られるコンテンツは再編集が難しく、からんだスパゲティ状態でした。また、これまでのWeb制作はHTMLの知識が必要で、記者が簡単に作ることはできませんでした」と、企画調整室宮澤亨氏は続けます。こうしたWebの縦割りを打破して、コンテンツの再利用を促進し新たなビジネスを展開するために、2005年11月に設立されたのが産経デジタルでした。

新聞業界で実績を積んできたNECソフトのチャレンジングな提案を採用

新聞社にとって、記事の制作・編集システムは24時間365日稼働する基幹システムであり、ダウンしてはならない高信頼性と高可用性が求められます。また、新たなシステムのユーザーは現場にいる多くの記者であり、必ずしもコンピューターの操作に精通しているわけではありません。したがって、各 Webメディアの記事制作・編集システムを統合した新たな基幹システムでは、信頼性、可用性およびユーザーの利便性が不可欠となります。

「1年半くらい前から新たな制作・編集システムの検討を行ってきました。システムの統合に際しては、今までのWebサイトとコンテンツを共有しながら新しいサイトを構築することが求められます。通常であれば開発に1年はかかると思われるシステムです。そこで、今までの制作・編集システムを手がけたベンダーと、新聞業界で実績のあるNEC/NECソフトに提案を依頼。12月中旬にRFPを出し、同月27日には決定するというスピードコンペでした。なぜなら、新しいWebサイト『iza』は、2006年6月のオープンが決まっていたからです」(脇部長)。

NECソフトは、既存のシステムとは発想を全く異にした、「デジタルコンテンツ管理システム(DCK)」を提案。これは、複数のメディアで制作されるコンテンツを一元管理することで、コンテンツ(ニュース)をDCKに投入すれば各サイトのレギュレーションに対応した形に自動的に加工してくれるという、いわばコンテンツ製造装置です。複雑なデジタルコンテンツ制作における様々な業務プロセスを実現する、高い自由度を備えたチャレンジングな提案でした。

「ソースを1つにしないと編集作業が二重になり、掲載許可や誤字脱字のチェック作業などが2回発生してしまいます。特にコンテンツの再利用をスムーズに行うには、権利関係の確認を1回にしなければなりません。そのためには、新聞制作システムからコンテンツを直接利用できるよう機械的な流れを作る必要がありました。NECソフトの提案は、今までのシステムを捨てる完全リニューアルというチャレンジでありリスクもありましたが、現状を変えない限り新しいビジネスは成り立たないと、NECソフトの提案を採用したのです」(脇部長)。

コンテンツを「サービス」として自由に利用するという考えに基づき、NECソフトではSOA(サービス指向アーキテクチャー)を全面的に採用してシステム構築を行いました。

半年というスピードで基幹システムをリニューアル

デジタルメディアの基幹システムを半年で一から作り上げるという過酷なプロジェクトでした。しかも業界初となるSOAによる構築です。

「当初システム要件は固まっておらず、走りながらの開発でした。しかも、半年で開発しながら、並行して既存のWebサイトも運営しなければなりません。また、全体がわかる人間が社内にいないという問題もありました。そこで、業務がわかっている代表者を各媒体から1~2名選抜し、NECソフトとプロジェクトチームを結成して業務要件とシステム要件をとりまとめました」(宮澤氏)。

「業務調査を始めたところ、そのために負担が増えることになる現場の記者たちからは、何でシステムを変えなければならないのかという声もあがりました。しかし、新聞社が生き残るための事業としてインターネットを中核にしなければならないことを説明し、理解を求めながら進めました」(脇部長)。

誰一人全体像を把握しておらず、プロセスの共通化がされていないシステムを短期間でリニューアルするために、NECソフトではお客さまと一緒に 1ヵ月かけてコンテンツフローを作成しました。そして、既存の新聞制作システムからニュース素材を直接取り込み、デジタル配信に必要な形式へ再編集・加工した上で各種のデジタルメディアに対して送信できる仕組みを構築したのです。

「実際に使うのは現場の人間です。システムを業務に近く、より実態に合わせるため、業務を細かく分析していろいろなフローを作りましたが、最終的にはシンプルな形に集約させ、私たちでレビューを繰り返しました。現場に対しては、ある程度システムが出来上がったところで見てもらった方が早いと判断し、4~5月にプロトタイプができた段階で初めて説明することにしました」(宮澤氏)。

メディア業界の基幹システムとしては初めてSOAを全面的に採用し、イベント駆動型(時間やメッセージの到達といったイベントの発生に従ってユーザーの操作とは独立してビジネスプロセスが実行される)とすることで、コンテンツの編集・加工や業務プロセスの変更などに際して高度な柔軟性・拡張性を発揮できるシステムとなっています(図1参照)。

DCKは、メディア集配信HUBサーバー、メディアCMSサーバー、WebサーバーなどにNECのIAサーバー「Express5800」9台をそれぞれ配し、SOAの中核となるESB(EnterpriseServiceBus)にはインフォテリア社の「ASTERIA Server」を採用。このESBを介し、必要に応じて各コンテンツの更新やWeb/モバイル変換、解禁解除などのサービスコンポーネントを組み合わせて実行することができるのです。したがって、ビジネスプロセスの見直しやサービスの拡充において、システム全体を変更することなく短期間で柔軟に対応できる、SOAならではのシステムとなっています(図2参照)。

SOA化によってプロセスを適切に細分化することができ、複数の媒体からDCKがハブとなる形で記事を取り込んでデジタル加工を行う仕組みが完成しました。ソースデータのテキストに写真など画像情報のメタ情報を付加した形でデータベースに蓄積されるので、再利用も容易です。出力側では、デジタルデータがそれぞれアウトプット用にXML形式として加工され、各媒体に適宜配信されます。

図1
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図1 DCKは新聞社のニュースを統合管理し容易に再編集できるので、各メディアの特性に合わせたニュースを迅速に提供できる

コンテンツの自動配信による省力化とクオリティ管理を実現

DCKは2006年6月に本稼働し、当初の予定通り「iza」がサービスイン。DCKという共通インフラを活用することで、作業の共有、コンテンツの共有を実現し、産経新聞、サンケイスポーツ、夕刊フジ、ビジネスアイのコンテンツを一箇所に集めて流すことができるようになりました。

「iza」は読者自身がブログを開設でき、政治から芸能まで、新聞記事にトラックバックをつけることが可能です。また70名以上の現役記者による「記者ブログ」も好評で、メディアと読者の双方向性を実現しています。さらに、「izanne(イザンヌ)」というブログを使ったイメージガールのオーディションを開催するなど、これまでの新聞社が運営していたニュースサイトとはひと味違う、まさに「新聞2.0」と言えるメディアです。

「DCKはバックエンドの制作システムであり、工場で自動的にコンテンツを作るイメージです。これまでWeb制作はHTMLの知識がないとできませんでしたが、DCKによって記者自らコンテンツを作れるようになりました。伝える人が広がったのです。足かせがなくなり、コンテンツの再利用がしやすくなりました。既存システムから切り替えて約4ヵ月経過しましたが、今までと同じ品質のコンテンツを誰でも作成することができるようになりました。また新規ビジネスにも短納期で対応できるようになりました」(宮澤氏)。

1日に1,000本程度のニュースがこのDCKで加工・配信されています。システムの一元化により管理が簡便化し、さらに誰が編集作業を行っても一定レベル以上の品質を確保でき、自社Webサイト5媒体、モバイル向けに10以上、外部サイト向けにも十数タイプに加工して配信を行えるようになりました。

「今までのWebサイトは静的なサイトでしたが、『iza』は動的なサイトです。これまで新聞社がやってこなかったことを『iza』で実現できたと思います。読者にも非常に好評で、ページビュー、ユニークユーザーともに急増しており、Sankei WEBに迫る勢いです。

DCKシステムは稼働したばかりですが、コンテンツの再利用が容易になったことに加えて、かなり省力化できるなどメリットを実感しています」(脇部長)。

図2
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図2 DCKは、クライアントサーバー型のシステムのようにユーザーの操作によってビジネスプロセスが実行されるだけでなく、サービスとシステムが分離されたイベント駆動型なのでシステムの柔軟性を一段と高めることができる

DCKをベースにした新たなビジネスを展開

ミッションクリティカルな基幹システムをSOAで構築することで、今後のビジネスにも柔軟に対応できる基盤ができました。それによって実現した「新聞2.0」の可能性は広大です。

「仕様変更が発生したときも、NECソフトは丸飲みにするのではなく、こうすればできるという提案をしてくれました。単なるベンダーではなくパートナーとして主張してくれたので大変助かりました。ベンチャースピリットでリスクを取りながら良いものができたと思います。単にニュースサイトを作るだけでなく、携帯電話やモバイルなどのユビキタス端末をはじめとして、様々なメディアへの配信に簡単に対応できるようになりました。今後は例えば自動販売機にコンテンツを流したりすることもあるかもしれません。また、法人に対してももっとコンテンツを提供できればと思います」(宮澤氏)。

「NECソフトの頑張りがなければ短期間では完成しませんでした。DCKは一緒になって創り上げたものであり、その働きに当社では初めてベンダーに対して感謝状を出しました。9月中旬からは新たな段階に入り、新規ビジネスへの対応もやりやすくなりました。今後も例えば動画を取り込めるシステムにするなど、新しいビジネスに対応できるように発展させたいと考えています」(脇部長)。

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システム担当より

TGCI2006調達コスト削減プロジェクトの推進

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NECソフト株式会社
ITシステム事業部
XMLソリューションセンター
リーダー 小林賢一

今回の産経デジタル様の案件に対しては、SEとして格別の思い入れがあります。お客さまのコンテンツ制作は、扱うツールもインターフェースも独自であり、とても複雑なものでした。これだけの種類のコンテンツを一度に制作できるシステムが実現可能なのか、システム設計を進める上で非常に悩んだポイントでもあります。しかし、お客さまのシステム実現への熱意は高く、複雑な制作フローをモデル化する際には、とても熱心なご協力をいただくことができました。
SOAは、複雑な制作フローをシステム化する上で、自然と採用した技術です。運用の中でサービスを自由に組み替えられることが強みとなり、トラブルを最小限に抑え、無事全サービスをリリースすることもできました。今後とも末永くご利用いただけるシステムとして、お客さまと共に育てていきたいと思っています。

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