
中原秀文 システム部長
資産に対する顧客の不安解消を目指した新しいリテール戦略「Financial Freedom」
東京スター銀行が新しいリテール(個人向け金融)戦略のCRM方針として掲げているのが「Financial Freedom」です。お客様が資産に対して抱く不安を銀行として一緒に解消していく姿勢を示しています。それを具現化したのが、これまでの銀行イメージを一変させたカウンターのない支店。お客様は資産づくりの学習や運用の相談が自由にでき、CRMセンターと結んだパソコンからは音声通話で口座開設も可能です。今後は、資産運用の専門的なコンサルテーションを行うバーチャル・スペシャリストがCRMセンターに配置され、未来型金融サービスの実現が期待されています。
- プロフィール
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東京スター銀行
- 本店/東京都港区赤坂1-6-16
- 店舗/東京・神奈川・千葉・埼玉・山梨など55店舗
- 従業員/約1,500人。
ファイナンシャル・ショールームのコンセプト「ESP」

日比谷支店のファイナンシャル・ショールーム
2002年3月に相次いでオープンした東京スター銀行の日比谷支店・上野支店は、ファイナンシャル・ショールームという位置づけがなされ、バックオフィスとお客様を隔てる銀行特有のカウンターがまったくありません。同行の支店は通常、お客様のフロアとバックオフィスとが3対7という割合ですが、両支店ではお客様のフロアが7になっています。壁面にオレンジ色が多用され、オープンで明るい雰囲気に驚かされます。
同行のCRM方針「Financial Freedom」は、お客様が将来困ることのないように、すでに持っている「資産の種」を大きく育てるお手伝いをしていくことを意図しています。その実現を図るファイナンシャル・ショールームのコンセプトが「ESP(Education/Solutions/Partnership)」です。
Educationによって資産形成を総合的にアドバイスし、Solutionsによって金融商品やサービスを提供し、Partnershipによって長期的な信頼関係の構築をしようというものです。
店内に入ると、まず案内係「グリーター」がお客様をお迎えします。銀行の紹介から始まって、Educationコーナーでは「ナビゲーター」が活躍し、お客様はマイホーム・教育資金、投資・資産運用、家計管理・生保・税金などについて、パソコンやタッチパネルを自由に操作して学習することができます。
Solutionsを提供するのが「コーチ」です。コーチは、対面ではなくお客様の横に座って、パソコン画面でコンサルテーションを行います。お客様が何に悩み、何を望んでいるかを一緒になって考えて解決していく役割です。グリーター、ナビゲーター、コーチとも、これまでの銀行にはない新しい職種としてお客様のパートナーの役割を担っています。
「新しいリテール戦略としてお客様に対して何ができるかを根本から発想し直し、今までの銀行のイメージをガラリと変え、新しい銀行のスタイルを体験していただくようにしました。まず銀行に来られたお客様をお待たせしないよう、ファイナンスを楽しんで学習していただけるようにしたのです。それによって、お客様が資産形成に興味を抱き、投資マインドを育て、投資ニーズが出てくれば必要に応じて適切な商品を提供します。お客様と一緒になって考え、資産に対する不安を解消していくのが、ファイナンシャル・ショールームの役割です」とシステム部の中原秀文部長は、CRM方針を語っています。
音声通話による口座開設と遠隔相談
CRMの第一歩は、新規顧客の獲得から始まります。より多くのお客様に自行に魅力を感じてもらい、まず口座を開設してもらわなければなりません。口座の開設は、どの銀行でも複写式の申込書に手書き記入するのが普通です。
日比谷・上野の両支店には、米国の空港などで見られるインターネット・キオスクが日本で初めて設置され、お客様はソファに座ったままでCRMセンター(コールセンター)のオペレーターと会話をしながら手続きを行うことができます。マイクとスピーカーを装備したヘッドセットが接続されたパソコンから、ワンクリックでCRMセンターにアクセスが可能です。 お客様の手をわずらわせることなく、オペレーターが手続きの入力を代行します。名前や住所を言うとタイプされた文字が画面に出てきます。申込書の入力内容に間違いがないかを確認して、確定ボタンを押すとしばらくして文字入力された申込書がプリントアウトされます。もう一度確認して印鑑を押すかサインをすれば、口座開設は完了です。
オペレーターは、10数分間のやり取りを通じてお客様の安心と信頼を獲得していきます。この間の会話が聞き取りにくかったり、会話と画面が同期しなかったりするとサービスは成立しません。システムに導入されているのがNECソフトのコンタクトセンターソリューション「CONCENTPRO(コンセントプロ)VoIP(Voice over IP)シリーズ」です。
「CONCENTPRO」によって、PHSに相当するクリアな音声品質、遅延解消を実現すると同時に、お客様とオペレーターとはWebの画像データを共有して会話をすることができます。2002年6月には回線に光ケーブルを敷設し、カメラを設置してお客様からオペレーターの映像を見ることができるようにし、信頼関係の増大を図っています。
バーチャル・スペシャリストによるコンサルティング
CRMセンターと接続したインターネット・キオスクを開設した同行のねらいは、口座開設にとどまるものではありません。面倒な諸手続きに広げ、さらには資産運用や外貨預金、住宅ローンなどの相談サービスを行う本格的な遠隔相談システムを確立する計画です。
CRMセンターに専門的なコンサルテーションを行えるバーチャル・スペシャリストを配置し、どの店舗にいるお客様とでもリアルタイムにコミュニケーションができるようにしていきます。お客様と離れていても、あたかも実際に対面しているかのようにWebページを共有しながら、内容の濃いアドバイスを行えるようにします。
例えば、お客様が収入や支出などの資産状況を言うと、CRMセンターですぐ計算がされます。その結果をもとに、バーチャル・スペシャリストが「この資産状況からは、こういう資産のロケーションを行ったらどうでしょうか」など、画面にグラフを出しながらアドバイスを行ったりします。
「人間は、人との付き合いで相手のことを脳に記憶して対応しています。そうした脳を銀行内に作り上げることを目指しており、そのためにはCRMシステムを構築しなければなりません。口座を開設していただいて終わりではもちろんなく、お客様の情報をできる限り収集して記憶させることが必要です。そこから、お客様のステージに合わせた最適な提案やサービスを行うようにします。今後は、顧客データベースをもとにしたマルチコンタクトチャネルを確立し、チャネルの多様化に対応していきたい。こうしたわれわれの目標に、的確に対応してくれたのがNECグループでした」(中原部長)
CRMの根本はワン・トゥ・ワン・マーケティングであり、お客様一人ひとりに対してサービスをいかにスムーズに提供できるかが重要です。同社の Financial FreedomのCRM方針によって、お客様それぞれが新しい銀行とのつき合い方を発見することが期待されます。

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