
横山昭 ITソリューション部
E-ビジネス開発部 部長
在宅透析データを大学病院・診療所間で伝送して共有
医薬・医療機器の大手企業バクスターインターナショナルの日本法人、バクスター株式会社は、腎臓病の患者さんが自宅で行う透析療法の治療データを大学病院と診療所間で伝送して情報共有する仕組みを構築中です。そのシステムの構築から運用までを一貫して提供しているのがNECソフトです。このシステムの確立で、効果的な病診連携をサポートし、腎臓病の専門医が遠く離れた在宅患者さんの治療状態をきめ細かく把握できるようになり、在宅透析の普及率が高まることが期待されています。
- プロフィール
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バクスター株式会社
- 本社/東京都千代田区六番町4
- 設立/1969年
- 従業員/約1,200名
- 事業内容/透析・バイオサイエンス・薬剤投与各分野製品の輸入・製造・販売とサービス。
- Baxter International Inc.(米国本社)創業/1931年
- 事業所/世界47ヵ国に主要事業所175ヵ所以上
慢性腎不全の在宅治療を実現するCAPD
バクスターインターナショナルは、医薬・医療機器の分野で人々の生命を守る治療法や製品を開発し、世界100ヵ国以上に提供しています。薬剤投与、バイオサイエンス、透析製品の3つを事業の柱とし、患者さんのQOL(Quality of Life)の向上およびヘルスケアシステムの向上に努めています。
事業の柱のひとつである透析製品は、腎臓の働きが低下して不要な老廃物や水分などの排泄が十分できなくなった末期腎不全の患者さんを対象に提供するものです。透析療法を必要とする末期腎不全の患者さんは、日本に約20万人以上いるといわれ、増加傾向にあるようです。
体内の老廃物や水分を取り除く透析療法には、血液透析と腹膜透析の2種類があります。腹膜透析は、患者さんが自分の腹膜を使って24時間連続して行う透析です。バクスターは1978年にCAPD(連続携行式腹膜透析)の実用化に世界で初めて成功し、日本では1982年に輸入承認・導入されています。 CAPDは末期腎不全の在宅治療を可能にし、患者さんの社会復帰に貢献する画期的な療法といわれながらも、日本国内ではまだ約5%の普及率に過ぎません。バクスターは、日本でCAPDの約75%のトップシェアを握り、CAPDの透析液や透析医療機器・器材、システムを提供しています。それだけでなく、治療におけるよりよい透析療法を幅広い視野からサポートするフォローアップ体制を整えています。
「当社のホームページには『腎臓病なんでもサイト』を開設しており、一般の人たちに腎臓病や腹膜透析について広く知ってもらうための情報提供を行っています。在宅で治療できるCAPDは、欧米に比べて日本では普及率が著しく低いのが現状です。慢性腎臓病は患者さんが一生をかけて治療するものであり、まず治療の選択肢として何があるのかを知ることが大切です。また当社では、地域の核となる病院とその周囲の診療所および患者さんをダイレクトに結ぶ医療システムとして『eへルス』プロジェクトを進めています」とITソリューション本部E-ビジネス開発部の横山昭部長は語っています。
患者さん宅と医療施設、医療施設同士を結ぶeへルスプロジェクト
CAPDでは、患者さんは、腹腔にカテーテルを植え込み、その中に透析液を注入し、約5~6時間貯めておいて後に排液。この操作を1日に3~5回繰り返します。その際に、透析液の注液量や排液量、除水量、治療時間などを透析記録ノートに毎日記入します。
またCAPDシステムの中には、患者さんが自宅で夜寝ている間に自動的に腹膜透析を行うAPD(自動腹膜灌流装置)もあります。バクスターのAPDシステム「ゆめプラス」では、患者さんは透析記録をスマートメディアに蓄積します。それを月に1回かかりつけの医療施設に持参して診療を受けます。医療施設は、そのデータをAPDリンク用専用パソコンで管理・分析し、患者さんの健康状態や治療状況を把握します。
さらに医師は処方をデータ化して、スマートメディアに入力するか、患者さん宅のAPDに電話回線を通じて送信することができます。処方が自動的に設定されるので、患者さん自身による操作の手間や負担が軽減され、治療が正確に行えます。
患者さんと医療施設をダイレクトに結ぶ医療システム、それがeへルスです。バクスターでは、eへルスをさらに発展させるために、病院や診療所が在宅透析データをインターネットで共有する「診療支援システム」を作り上げようとしています。患者さんとかかりつけの医療施設との間だけであった従来システムの輪を、もっと大規模に広げようというものです。
2002年3月から福島県、大阪府、長崎県の大学と協力し、診療支援システムが試験的に開始されました。それぞれの大学病院と連携している数ヵ所の診療所との間で、患者さんの透析データのやり取りを行っています。
診療所では透析データを大学病院に伝送することにより、内科や泌尿器科の腎臓病に詳しい専門医師による詳細な分析を受けることができます。的確な指示やアドバイスを迅速に受けられ、患者さんへの治療に役立てられるようになります。特に大病院と距離的に離れている過疎地や離島などに所在する診療所にとっては、大きなメリットを享受できます。
患者さんが透析データを直接送信も
「CAPDの啓蒙はパイオニアとしてのバクスターの使命であり、在宅支援システムはCAPDとeへルスを一層推進するものです。システムとして有効なのかを今後1年間検証したうえで、この輪を全国に広げていきたい。サーバーを病院に置くことも検討しましたが、メンテナンスやセキュリティーなどで万全を期すためにNECグループのASPサービスを利用することにしました」(横山E-ビジネス開発部部長)。
在宅透析データのやり取りを行う病院・診療所間の連携では、24時間365日の安定稼働を実現する設備や高速で信頼性の高いネットワーク接続環境、さらにアプリケーション運用や監視、セキュリティー保持が欠かせません。同社ではこうした機能を的確に発揮するものとして、NECソフトのASPサービス(ハウジングサービス)を活用することにしたのです。
今後、診療支援システムの輪が広がり、全国の多くの病院と診療所間で患者さんの治療データを共有し合うようになることが期待されます。これが進むと、病院・診療所では複数の患者さんの治療データを蓄積し、データベースとして今後の治療に役立てることができます。次のステップでは、患者さんが携帯電話や携帯端末などいろいろなデバイスから直接、透析データを送信できるようにします。さらにその次のステップでは、現在はオフラインで使用しているAPDそのものに送信機能を付けることにより、患者さんの手を煩わせることなくデータを自動的に送信できるシステムを構築する計画です。
診療支援システムの進展は、患者さんにとって通院の必要がなくなり、自宅で安心して治療に専念でき、長く元気な人生の活動に寄与するものです。確実なシステム運用を基盤とするeヘルスによって、在宅透析は確実に普及していく期待がもたれます。
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